山梨県立美術館etc・・・(その3) [車の旅]

 前回の続きです。

 「ジャン・フランソワ・ミレー」は19世紀にフランスで活躍した画家です。「種をまく人」や「落ち穂拾い」など、農民の働く姿を描いた農民画家として有名です。

 山梨県立美術館は、ミレーの作品を70点ほど所蔵する、世界的に有名な「ミレーの美術館」だそうです。地方の美術館としては、なかなか個性的だと思います。

 さて、お目当てのミレー館は、美術館の2階にありました。中に入ると、まず2つの絵に迎えられます。「ポーリーヌ・V・オノの肖像」と「眠れるお針子」です。モデルのお二人とも、ミレーの奥さんだった方々です。

 最初の奥さんが「ポーリーヌ・V・オノの肖像」のボリーヌさん。
ポーリーヌ・V・オノの肖像
ポーリーヌ・V・オノの肖像.jpg
 この方は、結婚後数年で肺結核のため亡くなってしまったそうです。

 ボーリーヌさんのポーズが「モナリザ」にそっくりです。
 この頃、ミレーは美術学校に通い、肖像画を描いて生計をたてていたそうです。
 愛妻を描くにあたって、有名なモナリザの姿が頭をよぎったのかもしれません。

 二番目の奥さんは「眠れるお針子」のカトリーヌ・ルメールさん。
眠れるお針子
眠れるお針子.jpg
 この方とは終生連れ添ったそうです。「眠れるお針子」は、去年、アメリカの個人収集家から競り落とし、美術館が購入したばかりの作品です。ミレー館で、世界で初めて一般公開されることになったそうです。

 この絵が書かれたころは、ミレーは非常に貧乏な生活を送っていました。カトリーヌさんは、家計を助けるため内職をしていたのでしょう。仕事の最中に、ついうたた寝をしてしまったようです。

 さて、ミレー館の冒頭に、この2枚の絵が並べてかざられているのには、訳があります。
 説明文によると、この2枚の絵を見比べると、ミレーの作風、そしてその背後に隠されたミレーの心情が読みとれるそうです。

 たしかによく見ると、2枚の絵から受ける印象が微妙に違うことに気がつきます。

 「ポーリーヌ・V・オノの肖像」からは、非常に写実的な印象を受けます。画家を真っ直ぐに見つめる、少し緊張感をたたえたポーリーヌの瞳。
 ここではミレーは、あくまでも「自分の目に映った美」を忠実に表現している気がします。

 しかし「眠れるお針子」からは、こうした写実的な印象はあまり感じません。さきほどの絵と違い、「目に見えない美」の方を重視している気がします。

 家族のために内職をし、疲れて寝てしまった妻カトリーヌの姿に、ミレーは愛情を感じるとともに、「美しさ」も見出したのではないでしょうか。

 このあとミレーは、農村で働く人々の姿を描き始めました。もしかもするとミレーは、こうした真摯に働く人々の姿の中に、疲れて寝てしまったカトリーヌに見出したような「美しさ」を感じ取ったのかもしれません。

 最初の奥さんを亡くしてから、ミレーの心の中で、何かが変わったのかもしれません。

 この他、興味深い絵をいくつかご紹介しますと、まず「無原罪の聖母」
無原罪の聖母
無原罪の聖母.jpg
 あのマリア様を描いたそうですけど、がっしりした足とちょっとゴツい体。
 そして、よく見ると顔が農民のようです。

 そして有名な「落ち穂拾い」
落ち穂拾い
落穂ひろい秋.jpg

 そしてこれは「落ち穂拾い(夏)」です。
落ち穂拾い(夏)
落穂ひろい(夏).jpg

 構図が同じです。ミレーは、実は同じ構図で「落ち穂拾い」を何枚も書いたようです。

<その4に続く>

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コメント 7

qoo2qoo

こんばんわ☆
「落ち穂拾い」家にもあります。本物ではないですけど^^;
素敵ですよね♪♪
by qoo2qoo (2009-02-26 23:34) 

Yuki

こんばんわ。
ご訪問をありがとうございます。
ミレーの落ち穂拾いは有名ですが、何枚も書いたの
ですね。(*^-^)
by Yuki (2009-02-26 23:54) 

ビショップ

皆さん、nice&コメントありがとうございます。
なかなか、ネットに接続できなくて、お返事が遅れてしまいました。すみません。

>qoo2qoo 様
 落ち穂拾いは、聖書に出てくるみないですよ。聖書とまったく同じ光景を見て、ミレーは大変感激したそうです。

>Yuki 様
 落ち穂拾いは、この他に「版画」があるみたいです。
 ミレーは、同じ構図をとっても気に入ったみたいですね。


by ビショップ (2009-03-01 19:51) 

水無月

美術館に出かけたくなりました。
画家の人生を辿っていくと
より作品に対する興味が出てきますよね。
by 水無月 (2009-03-01 21:42) 

ビショップ

引き続き、nice&コメントをありがとうございます。

>水無月 様
  たしかに作品を見るのと同時に、解説を読んだり、美術館で出版している本などを見たりすると、興味深い事柄に出逢うことがありますね。

by ビショップ (2009-03-02 21:27) 

のりりん

落ち穂拾いしか知りませんでしたが、他の肖像画もとても素敵ですね♪
by のりりん (2009-03-03 18:13) 

ビショップ

>のりりん 様

 落ち穂拾い、有名ですよね。
 この他にも「晩鐘」や「種をまく人」などの農民画がありますよ。

 いずれも逆光、半逆光のポジショニングで描かれていて、もでるの表情が判別できなくなっています。(わざと?)

by ビショップ (2009-03-03 20:09) 

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